11月25日の女性に対する暴力撤廃の国際デーにあたり、
ヒューマンライツ・ナウ女性に対する暴力プロジェクトの特集記事が
JapanTimes(11月25日発行号)に掲載されました。
国連条約、女性の権利の課題を浮き彫りに
ジャパン•タイムズ
2009年11月25日
1979年12月18日国連総会は、女性に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約(女性差別撤廃条約)を採択し、今年はその30周年記念に当たる。さらに、1999年に11月25日を女性に対する暴力撤廃の国際デーに定めてから10年になる。
これを記念して、ジャパン•タイムズは、弁護士であり日本を拠点にする国際人権NGOの事務局長である伊藤和子氏に、女性の権利に関する進展と課題について取材した。
ヒューマンライツ•ナウ(HRN)は、生命にかかわる人権問題に焦点を当てており、女性に対する暴力はHRNの重点分野の一つである。HRNは特にアジアを中心に、調査、アドボカシー、ロビー活動を地元のNGOと協力しながら行っている。
アジアには、暴力を伴う深刻な女性の権利の問題が存在する。例えば、HRNが今年調査を行ったインドでは、夫の要求するダウリー(花嫁持参金)を十分に払えないために、女性が焼き殺されている。死に至らない場合でも、夫に商業的な売春を強要され、拒否しても夫の暴力に苦しめられている女性がいる。統計にあるだけで、毎年7-8千人の女性が殺害、自殺あるいは謎の死を遂げている。
HRNはこうした事例にある暴力を最も深刻な女性に対する差別の形態であると考える。暴力には、女性の社会進出を妨げる「萎縮効果」があり、女性の社会進出に関する多くの問題の陰に潜んでいる。
しかしながら、30年前に女性差別撤廃条約が採択された際に、こうした問題は見過ごされていた。この条約が、欧米の女性のイニシアチブの中で、政治、雇用、教育面等での平等といった課題により焦点を当てていたからだ。私は、過去30年におけるこの条約の最も目覚ましい業績は、女性に対する差別に取り組む上で、解決されるべき根本的な問題として暴力に光が当たるようになったことであると思う。90年代にこうした認識が広がる中で、1994年に女性に対する暴力に関する国連特別報告者が任命された。1995年、北京で開かれた世界女性会議は、いわゆる発展途上国からの参加者と共に、暴力の問題を主に扱い、それに関する明確な目標を設定した。
さらに最近では、国連ミレニアム開発目標(MDGs)に向けたイニシアチブも、この問題を明らかにしている。MDGsは、貧困と飢餓を終わらせ、小児死亡率を削減するといったことの他に、産婦死亡率の削減をその目標と定めている。しかしながら、他の目標に比べ、産婦死亡率の削減の進捗状況はあまりよくない。その原因の一つは、差別を受けている女性は医療にアクセスできないことにある。統計によって産婦死亡率の削減に遅れが出ていることが明らかにされおり、より多くの人がこの問題に注意を向け初めている。アジアにおけるこうした状況を改善するために、欧米でも発展途上国でもないアジアの国として、日本はユニークかつ有利な立場にある。HRNは、日本を拠点にする国際NGOとして活動する中で、こうしたことを感じている。例えば、HRNが他のNGOとインド政府に対する苦情の申入書を書いた際に、HRNだけが政府からの返答を得た。地元あるいは国内 NGOだけでなく国外の NGO が課題を投げかけ、問題を指摘することは、政府を動かす上で、意味のあることである。アジア諸国は欧米からの提案に対して、欧米とは違うという理由で、あまり聞く耳を持たないことが多い。日本を拠点にするNGOは、欧米のNGOと比べてより大きな影響を与えることもあり得るのだ。
こうした意味で、私は日本国内の女性の権利の問題の進展が、アジアでの優れた事例になることが重要であると考える。今年6月、女性差別撤廃委員会(CEDAW)は日本の報告書を審査した。委員会に個人通報を検討する権限を与える女性差別撤廃条約の選択議定書の批准を含む、多くの問題に改善の余地があると委員会は指摘した。選択議定書の批准は、新政権のイニシアチブにも含まれており、現実的に期待できるものになりつつある。私は、アジアでは今のところ少数の国しか批准していないこの選択議定書を日本政府が早期に批准すること、さらにその批准によって、その他のアジア諸国の選択議定書の批准の促進につながることを期待している。