性的同意とは、性的な行為について、お互いの意思を確認し、尊重することです。
「嫌だと言われなかったから」「恋人同士だから」「一緒にホテルに入ったから」といって、性的な行為への同意があるとは限りません。また、一度OKしたとしても、怖くなってやっぱりやめたい、ということも起こりえます。
同意は、どちらか一方が相手から「取る」ものではなく、一人ひとりが自分の意思を自由に表し、お互いに確かめ合うものです。一度同意したことでも、途中で気持ちが変わったときは、いつでも撤回できます。
ヒューマンライツ・ナウ女性の権利プロジェクト・ユースチームは、性的同意について若い世代と一緒に考えるため、ハンドブック『性的同意ってなんだろう?』を制作しました。
性的同意は、男性だけが確認するものでも、女性だけが確認されるものでもありません。性別や性的指向、二人の関係性にかかわらず、性的な行為を始めようとする側が、相手の意思を確認することが大切です。
同意の確認は、決まった言葉を形式的に何度も繰り返すことではありません。相手が安心して気持ちを伝えられるか、断りにくい状況になっていないか、途中で気持ちが変わっていないかに注意しながら、コミュニケーションを続けることです。
性的同意について考えることは、誰かを疑ったり、行動を制限したりすることではありません。自分と相手の身体、気持ち、選択を尊重し、誰もが安心できる関係をつくるためのものです。
ヒューマンライツ・ナウは、全国の18歳から39歳までの3,000人を対象に、「性的同意に関する意識調査」を実施しました 。
調査では、81.17%の人が「性的な行為をする際に、相手の同意は常に必要」と回答しました。
一方で、具体的な場面について尋ねると、24.13%が「言葉はなくても、態度や雰囲気から同意していると感じる」、19.37%が「恋人・配偶者・性的パートナー等の関係性があれば、同意していると考えることが多い」と回答しました。性的同意の必要性は広く認識されつつある一方、雰囲気や関係性を、現在の明確な意思の代わりに捉えてしまう可能性があります。
また、「相手がNoと言いたくてもNoと言えないまま、性行為に応じる事態を想定できますか」という質問では、密室で逃げられない状況、相手に嫌われることへの不安、仕返しへの恐怖、飲酒による判断力の低下などによって、Noと言えない場合があるとの回答がみられました。
その一方で、42.03%が「想定できない、嫌ならはっきり言うべき」と回答しました。この設問は複数選択式であり、各回答は相互に排他的ではありませんが、Noと言えない状況への理解と、拒否する責任を相手に求める考え方とが、同時に存在している可能性がうかがえます。
しかし、恐怖や強いストレスを感じたとき、誰もが「嫌だ」「やめて」と言ったり、逃げたり、相手を押し返したりできるとは限りません。声が出なくなる、身体が固まって動けなくなる、その場を生き延びるために相手に合わせてしまうなど、本人の意思とは異なる心身の反応が起こることがあります。
相手がNoと言わなかったこと、逃げなかったこと、抵抗しなかったことは、それだけで同意があったことを意味しません。性的同意について理解するためには、同意を確認する方法だけでなく、人は危機的な状況では明確に拒否できないことがあると知ることも欠かせません。
本ハンドブックは、性的同意について「言葉を知っている」ことと、実際の場面で相手の状況を想像し、立ち止まって行動できることとの間にあるギャップを埋めるために制作されました。
出典:ヒューマンライツ・ナウ「性的同意に関する意識調査」(調査会社Freeasyに委託して2026年6月17日に実施、全国18〜39歳、n=3,000)
沈黙していること、抵抗していないこと、笑っていることだけでは、同意があるとは判断できません。相手がどう感じているかを決めつけず、言葉やコミュニケーションを通して確認することが大切です。
以前同意したことがある場合や、交際・結婚している場合でも、今回の行為に同意しているとは限りません。キスへの同意が、その先のすべての性的な行為への同意を意味するわけでもありません。。
最初は同意していても、途中で「やめたい」「続けたくない」と思うことがあります。途中で意思を変えることは、わがままでも、相手を裏切る行為でもありません。
上下関係、恐怖、経済的な依存、周囲からの圧力、飲酒や薬物の影響などによって、自由に意思を示すことが難しい場合があります。「断ったら嫌われる」「不利益を受ける」「相手を怒らせるかもしれない」と感じている状態では、本当に自由な同意が成立しているかを慎重に考える必要があります。
性的同意は、トラブルや訴えを避けるためだけの手続ではありません。自分の希望だけでなく、相手の気持ち、身体、タイミング、境界線を大切にし、お互いが安心できる関係をつくるためのコミュニケーションです。
性暴力や強い恐怖に直面したとき、人の心身には、危険から自分を守るためのさまざまな反応が起こることがあります。
本ハンドブックでは、こうした反応を理解する手がかりとして、5Fと呼ばれるサバイバル反応を紹介しています。危機に直面した人が、どの反応をするかを自分で選べるとは限りません。
大声を出せなかった、逃げなかった、抵抗しなかった、相手に合わせるような行動を取ったとしても、それは行為を望んでいたことや、同意していたことを意味しません。
相手が沈黙している、身体が固まっている、反応が乏しい、急に受け身になったといった場合には、行為を進めず、いったん立ち止まる必要があります。「大丈夫?」「続けてもいい?」「やめようか」と確認し、相手が安心して意思を伝えられる状況をつくることが大切です。
| 身近な場面から考える性的同意 | 恋人同士、飲酒時、先輩・後輩など、若者が直面し得る具体的な場面から考えます。 |
| 同意を確認するコミュニケーション | 相手の気持ちを確認する言葉、自分の気持ちを伝える方法、途中で意思が変わった場合を扱います。 |
| 5Fへの理解 | なぜ声を上げたり、逃げたり、抵抗したりできないことがあるのかを学びます。 |
| 周囲の人ができる5Dアクション | 性暴力やハラスメントにつながる場面で、自分と相手の安全を守りながら行動する方法を紹介します。 |
| 相談先と確認クイズ | 一人で抱え込まないための相談先と、日常のケースから理解を確認するクイズを掲載しています。 |
学校・大学・団体での活用についてのお問い合わせは info@hrn.or.jp まで
ハンドブックをグループで使用する場合も、参加者に個人的な被害経験を話すよう求めないでください。性的同意や性暴力について学ぶ場には、自身の経験を思い出してつらくなる人や、現在も被害について誰にも話していない人がいる可能性があります。

性的同意ハンドブック『性的同意ってなんだろう?』
制作:ヒューマンライツ・ナウ 女性の権利プロジェクト・ユースチーム
ヒューマンライツ・ナウの女性の権利プロジェクトのもとで活動するユースチーム。U30世代が中心となり、刑法性犯罪規定改正の「その後」を社会に定着させ、文化としての「性的同意」を広めるための活動を行っています。イベントやSNS発信、教材制作を通じて、若い世代から社会に変化を広げることを目指しています。
性的同意は、一部の人だけに関係する特別な問題ではありません。誰かと関係を築くとき、自分の気持ちを大切にし、相手の気持ちを尊重するために、私たち一人ひとりが考える必要のあるテーマです。
大切なのは、正解を暗記することだけではありません。迷ったときに立ち止まること。相手が安心して意思を伝えられる状況にあるかを考えること。分からないときは、決めつけずに確認すること。
このハンドブックが、性的同意について学び、身近な人と対話するための最初の一歩となることを願っています。