【NYイベント】~#WeTooとオリンピック:スポーツ界の差別と性暴力に対して声をあげよう~ NGO CSW63 パラレルイベント

去る3月12日にヒューマンライツ・ナウは、第63回女性の地位委員会(63rd session of the Commission on the Status of Women, CSW63)開催中のNY市内で表題の討論イベントを開催しました。

(原題:#WeToo & Olympics : Collective Voice Against Discrimination & Sexual Violence in Sport)

今回のイベントはNGO CSWパラレルイベントとして、下記のCSW63のテーマのうちレビュー・テーマに沿って構成されました。

プライオリティ・テーマ

ジェンダー平等ならびに女性・少女のエンパワメントのための社会保障制度、公共サービスへのアクセス、持続可能なインフラストラクチャー

レヴュー・テーマ

女性のエンパワメントと持続可能な開発への関連

【概要】

2020年の東京オリンピックまで残りあと少し。オリンピックは世界中の注目を浴びる国際イベントです。主催国内ならびに国際社会で、少女や女性に対する差別や性的暴力、そして人権全般に対する意識を高める絶好の機会でもあります。ヒューマンライツ・ナウは、これまでも2020年東京オリンピック開催準備などの過程において人権侵害のないよう、さまざまな取り組みをしてきました。

今回のイベントでは、アメリカのスポーツ界における差別や性的暴力の実態、それらが許されてしまう社会的あるいは文化的背景、被害をなくすための取り組みなどを紹介するとともに、スポーツ界ならびに社会全般における女性に対する差別や暴力をなくす必要性を討論しました。また、声を上げた被害者を大勢でサポートすることによって社会変革を可能にする#MeTooや#WeToo運動の重要性と可能性についても討論しました。モデレーターには我謝京子氏(ロイター通信NY社)をお迎えし、パネリストには以下の3名をお迎えしました。

  • ナンシー・ホグスヘッド・マカー氏(Ms. Nancy Hogshead-Makar)

オリンピック水泳金メダリスト。公民権弁護士。スポーツ界の少女・女性に法的アドボカシーを施すNGO「Champion Women」の取締役。共著に、性別による差別を禁止する連邦法と社会変革を書いた『Equal Play, Title IX and Social Change』がある。

  • ジェニファー・セイ氏(Ms. Jennifer Sey)

アメリカのナショナル体操チームメンバーに8回選抜される。1986年のナショナル・チャンピオン。リーバイス(Levi Strauss & Co.)のシニア副会長&チーフ・マーケティング・オフィサー。エリート体操選手としての体験を基にした著書『Chalked Up』は、ニューヨーク・タイムズEブックのベストセラーにもなっている。

  • 伊藤和子氏

ヒューマンライツ・ナウ事務局長。東京拠点の人権弁護士。UN Women市民社会アドバイザリー・グループのメンバー、東京弁護士会の両性の平等に関する委員会委員長、日弁連国際人権問題委員会委員、ジェンダー法学会理事など歴任。『人権は国境を越えて』、『ファスト・ファッションはなぜ安い?』など著書多数。

【パネル内容】

~1.虐待文化(Abusive culture)をなくそう~

最初にジェニファー・セイ氏から、少女時代の大半をエリート体操選手として過ごした自身の経験を基に話して頂きました。

2018年に世間を驚かせたニュースに、ラリー・ナサールという米国体操連盟の元チーム・ドクターによる性的虐待の発覚事件があります。[1] このドクターの30年以上にも及ぶ性的虐待の被害に遭った女性は、500人近くにも上ると報告されています。それほどの人数が被害に遭っていたにもかかわらず何年間も沈黙が通されたのは何故でしょうか? ナサール事件の背景には、そのような行為が許されてしまう虐待文化 (abusive culture) があるからだとセイ氏は言います。そして、スポーツ界やオリンピック界のリーダーやコーチなど関係者が共に立ち上がって健全な環境の保護に努めない限り、スポーツ界における精神的、肉体的、性的虐待はなくならないだろうと言います。

セイ氏がナショナル・チームに加わったのは11才の時。14才で実家を離れ、家族のいない孤立した環境で、1日9~10時間の厳しいトレーニングの日々が始まりました。骨折中でも練習は当然のように続行され、「モチベーション」という名目で食べ物も満足に与えられない、という精神・肉体的虐待を日常的に体験しました。チーム・メート8名のうち2名は当時のナショナル・コーチによって性的虐待されていましたが、少人数のチーム内で声を上げにくいことや、誰かに相談しても「考えすぎ」「コーチの人生を台無しにする」「そのことは話さない方がいい」などと言われて相手にされず、疑問と悩みを抱えながらも黙るしかありませんでした。「それでは、私たち選手の人生はどうなるのでしょう?」とセイ氏は問いかけました。

そんなナショナル・チームでの生活が2年続きましたが、10年ほどにも感じられたと氏は言います。次第に意気消沈して混乱していきました。空腹を訴えると「太ってる」と言われ、疲れや怪我の痛みを訴えると「怠け者」と言われる。虐待加害者がよく使う心理的支配の戦術です。子供を虐待する親が「あなたがこれをしなければ、私はあなたにこんなことすることもない。」と言ったり、DV加害者である夫が「料理を焦がしたのが悪い」と妻への暴力を正当化するのと同一線上にある、とセイ氏は言います。

アメリカ体操界などにおける精神的、肉体的、性的な虐待文化は一般的に浸透しており、それはセイ氏が選手生活を終えてからも一向になくなりませんでした。懸念したセイ氏は、ナショナル・チャンピオンという栄光の裏に存在した過酷な日々を綴り、2008年に『Chalked Up』という本として出版します。本への批評や反応は様々でした。「80年代の話。今はもう変わっている。」「(体操界の)悪い面じゃなく、良い面は書けなかったのか?」「本名を出す必要があったのか?暴露されたコーチに訴えられるのでは?」といったものから、「オリンピックに出られなかった腹いせか?」といったものまであったと言います。そんな批評を受けたセイ氏は、自分に落ち度があったのかもしれない、自分に根性が足りなかったのかもしれない、本を書いたことは間違いかもしれない、と考えたこともあったそうですが、似たような被害に遭った人々が次々と名乗りでたりしたことで、考え直したと言います。

その他に、自身の受けた虐待を理解するために、セラピー療法が役立ったこともセイ氏は共有してくれました。練習に明け暮れる孤立した世界の中で、虐待加害者の巧みな戦術による洗脳を日常的に受けると、自分に落ち度があるかのように信じ込ませられます。実際に、選手生活を終えて何年も経ってから、ようやく自分が虐待を受けていたことに気付くケースが多いそうです。また、セイ氏自身もそうであったように、虐待の過去は後の人生にもずっと影響を残します。セラピーのおかげで、ようやく長い間抱えていた混乱や自責観念から解放されたと言います。

今必要とされていることは、まずスポーツ界の連盟や協会などの運営組織が、性的虐待だけでなく全ての虐待を例外なく許さない政策(Zero tolerance)を実施することだと氏は強調します。なぜなら、精神・肉体的虐待が性的虐待に至るまでの土台となるからです。これまで無秩序にやりたい放題が許されてきたコーチをきちんと教育することと、子供を保護するリーダーシップが現在必要とされています。学校の教師には許されない行為が、スポーツ・コーチには許されるという現状は変えなければいけません。また、被害者の声を届けることは非常に重要です。アメリカではタイムズ誌やGlamourなどのファッション誌がスポーツ界の性的虐待被害者のストーリーを取り上げることはあっても、声を上げた被害者をスポーツ界がヒーロー扱いすることはまだないそうです。その結果、若い女の子たちへは未だもって「何も言わない方がいい」という無言のメッセージが届けれられてしまっている状態だとセイ氏は訴えました。

~2.全てのアスリートに法的保護とエンパワメントを~

ナンシー・ホグスヘッド・マカー氏からは、スポーツ界の少女、女性、子供たちを虐待や性差別から法律によって保護するための活動など、アメリカにおけるタイトルIX(教育改正法第9編)[2] に関する話なども含めて語って頂きました。

マカー氏が本格的な水泳トレーニングを開始したのは11才のときです。12才でアメリカのトップの座につき、14才で世界のトップクラスに踊り出たマカー氏は、15才で実家を離れて、オリンピックに向けてのトレーニングを開始しました。そして1984年のロスアンジェルス・オリンピックでは、金メダル3つと銀メダル1つを獲得するという功績を残しました。やがて選手生活を終えて弁護士になったマカー氏ですが、女性の権利団体を通して30年以上にも渡り、タイトルIX(教育改正法第9編)という教育活動における性差別の禁止を規定した基本法に携わってきました。1972年に制定されたタイトルIXは、やがて大学キャンパス内の性暴力も扱うようになり、性差別や暴力を禁じるポリシーを大学や学校に普及するために、多くの学生や学校関係者とも関わってきました。

2001年にコロラド州立大学のフットボール選手がキャンパス外のパーティーで女生徒をレイプするという事件が起きましたが、結果的には大学の責任となりました。スキャンダルの的となったコロラド州立大学のタイトルIXアドバイザーとして2008年に大学に雇われたマカー氏ですが、そこで働いた5年間でいろいろ学んだそうです。2010年頃から氏のもとに、国内のアスリートから似たような事件の被害の声が寄せられるようになりました。ひとつ違うのは、大学のキャンパスでなく、学校と無関係のスポーツクラブやオリンピック・ムーブメント内で事件が起こっているという点でした。オリンピック・ムーブメントとは、「スポーツを通してこころとからだを健全にし、さらには文化・国籍といったさまざまな違いを超え、友情や連帯感、フェアプレーの精神をもって互いを理解し合うことで、平和でよりよい世界の実現に貢献する」というオリンピックのあるべき姿(オリンピズム)を世界中の人々によく知ってもらい、その考え方を大きく広げていく活動のことです。[3] その運動の内部でも暴行や虐待が起こっているのはなぜでしょうか?

マカー氏が弁護士キャリアを通して次第に見えてきたのは、独立したスポーツ・クラブでは子供から大人も含むアスリートを性虐待から保護するためのものが何も存在しないことでした。この問題において言えるのが、第一に被害への保護がないという点です。米国水泳連盟には性虐待被害に対しての賠償に$100,000を払うというポリシーは存在しますが、財産と呼べるものをほとんど所有しないスポーツ・クラブを相手どっても、取れるものがない現実に原告側弁護士はしばしば直面します。そのため、名ばかりの無駄なポリシーであることで知られています。第二に、スポーツ組織が性的虐待問題の対応責任を拒否するという点です。アメリカのスポーツ界の運営組織は、USAスポーツ・アソシエーションズとその傘下にある合計で50のナショナル運営組織(USA水泳、USAテコンドー、など)からなっていますが、学校では問われる責任がスポーツ・クラブでは問われないままの状態は、異様に映りました。

1984年、マカー氏のオリンピック・コーチであった男性は、彼女のチーム・メートの女子選手一人と交際関係にありました。チーム・メートは当時16才だったので、コーチの行為は実質上は未成年に対するmolest(性的いたずら、ワイセツ)であり、立派な犯罪です。けれど、そんな過去のあるコーチが、キャリアに何の傷もつくことなく、その後も平然とコーチ業を続けていることが現実です。マカー氏とそのチーム・メートは、13名の女性オリンピック金メダリストと共に、そのコーチがスポーツ・クラブに雇われないように30年間闘いました。彼を雇おうとしているクラブを訪ねたり連絡を取っては、コーチとして雇われるべき人間ではないことを訴えました。優れた実績を残した元オリンピック・コーチが相場よりずっと安い報酬で雇えるので、大抵のクラブは雇ってしまう傾向があるからです。実際にこのコーチは、無償でコーチングするオファーも出していたそうですが、そんなケースに出会ったら「危険信号だと思って間違いない」とマカー氏は言います。セイ氏によると、前出の米国オリンピック体操チーム元ドクターのラリー・ナサールも、全く同類のことをしていたそうです。

やがて、水泳界のオリンピック・メダリストが性虐待に対して声を上げ始めたことで、少しずつ変化が見え始めました。2012年に米国オリンピック委員会のトップに直接交渉し、「年齢や同意に関係なく、コーチと選手の間のいかなる恋愛・性的関係を禁じる」というルールを全てのナショナル運営組織を通して実施させるまでに至りました。性的虐待や暴行から子供を守るとき、「本人の同意があったから」という理由が通らないようにすることは重要な点です。

アメリカでは、職場で上司や経営者などによるセクハラ、性的虐待、あるいは性差別から従業員を守るタイトルXII(公民権法第7編)のように、力関係で弱い立場の者を守る法律が数々と存在するとマカー氏は言います。弁護士が顧客と性的関係を持ったら、弁護士の免許証がはく奪されます。医者もセラピストも刑務所の警備員も同じです。それが、スポーツ・コーチにはありません。「選手と肉体関係を持っても性的虐待をしても、はく奪される免許証がないのです。雇われる際の素性調査もないのです。」それがスポーツ界の落とし穴でした。幸運にも、水泳は客観的な競技なので、コーチの指導なども体操界などとは異なり、ナンシー氏が性的虐待を受ける機会はありませんでした。しかし、水泳界では現在、1000人以上もの元選手がコーチと性的関係にあったことを明らかにしているそうです。コーチと選手という力関係で絶対的優位な立場を利用したコーチによる性的支配が、いかに日常的に蔓延っていたかを示しています。選手を精神的、肉体的、性的虐待などから守るルールを、米国オリンピック委員会などがずっと以前に定めるなどして責任を果たしているべきだった、とマカー氏は指摘しました。

2012年からマカー氏が携わり、セイ氏も議会で証言するなどプロセスに関わったという新しい連邦法 Protecting Young Victims from Sexual Abuse and SafeSport Authorization Act(若い被害者の性虐待からの保護と安全なスポーツ承認法令)が、2018年ついに制定されました。米国オリンピック委員会に法的義務を課せるだけでなく、選手、コーチ、保護者、役人などオリンピック・ムーブメントに関わる全ての人々にも虐待を24時間以内に報告する義務を課するものです。

最後にマカー氏は、今後は選手をエンパワメントすることで、選手自身にキャリア上の意志決定権を与える環境を作るとともに、様々な問題の底辺にある力関係をなくし、スポーツ界のシステム変革にも取り組んでいく必要性を訴えました。

 

~3.日本に求められている課題~

伊藤和子氏からは、2020年東京オリンピック・パラリンピックの開催国である日本国内の状況が共有されました。東京都議会では2018年、ヘイト・スピーチの規制と性的少数者への差別の禁止条例が可決されましたが、人権状況はまだまだアメリカより遅れています。

体罰に関して言えば、学校での体罰は法で禁止されているものの、スポーツ界での体罰はまだまだ根強く存在すると伊藤氏は言います。スポーツのトレーニングにおいて教師やコーチは支配的であり、特に学校における人権侵害は酷い状態です。一例として挙げられたのが、過去30年ほども小学校の運動会で継続的に行われてきた人間ピラミッドです。頂点が7メートルという高さの人間ピラミッドは崩れると大変な怪我を追うにもかかわらず、安全対策もないまま実行されるケースがほとんどです。過去に人間ピラミッドが崩れて生徒が死亡したケースも少なからずあります。

その他に、国を代表する官僚などのセクハラに関するコメントにも見られるように、セクハラや人権全般に対する意識がまだまだ低いことが指摘されました。また、アメリカのタイトルIXに匹敵する法律はまだ日本にはなく、2018年の東京医科大学医学部入試試験で女性受験者が故意に不合格にされていた事件のようなことが、未だ実際に起こっている状態であることが話されました。

日本スポーツ界でにおけるセクハラの実態は、アメリカ同様に声を上げる被害者がまず少ないことだと伊藤氏は述べました。オリンピック金メダリストの柔道コーチが19才の女子選手にトレーニング・キャンプ中に性的暴行を働いた2011年の事件がありますが、トレーニング・キャンプ中に性的虐待や暴行の危害が与えられることは、日本では稀ではありません。この柔道コーチは、相手の同意があったと主張しましたが逮捕されました。性的暴行の被害者の観点からみれば、犯罪責任がきちんと問われた稀なケースだと伊藤氏は言います。

その後2013年には、柔道界で別のスキャンダルが発覚しました。ナショナル柔道オリンピック・チームの女子選手15名がコーチから暴力、ハラスメント、屈辱を受けたことを訴えたものです。最終的にはコーチは辞任するに至りましたが、全日本柔道連盟のトップ・メンバーの女性数人から「コーチは職を失うというのに、被害者が名前を公表しないのは不公平だ」といった内容のコメントが寄せられたというのは、非常に残念な点だと言えるでしょう。

2018年は日本にも#MeToo運動の波が到来し、数々のスキャンダルが発覚しました。スポーツ界のスキャンダルといえば、日本大学のアメリカン・フットボール選手が試合中に相手チームの関西学院第のクオーター・バック選手に危険な反則タックルをした件があります。タックルをした選手が後に開いた記者会見によると、反則行為はコーチの命令によるものだったらしく、最終的には大学チームのマネージメント側の責任とされました。このように、コーチによる暴力や虐待や命令を受け入れる傾向は根強く存在し、それらがセクハラやパワハラの原因となるのが現状だと伊藤氏は言います。

ほとんどのスポーツ協会は、暴力や虐待を明確に禁じるルールを定めていません。スポーツ界の不祥事によるスキャンダルが発覚する中、国が主導してスポーツ界に共通するルールを規定する動きが出てきています。日本オリンピック協会と日本スポーツ協会が4年ごとに適合性審査を実施し結果発表するというものですが、4年ごとでは充分と言えない、と伊藤氏は指摘しました。

日本の#MeToo運動の背景については、従来の沈黙を破って被害の声を上げた女性がバッシングされる社会現象について触れられました。それは、スポーツ界にも職場にも学校にも共通することです。また、性的暴行やハラスメントの被害者女性に至っては、「性的同意があったと勘違いされる格好や行動をした自分が悪い」と非難的に責められるのが現状です。例えば、かなりの確率で、「泥酔状態の女性は性的同意をしている」「女性と二人きりでのディナーやドライブは性的同意」と見なされてしまう日本では、性的同意に対する男性の認識不足は大きな問題です。性的暴行やハラスメント加害者の責任追及が法的に困難な上に、被害者を責める社会風潮があるため、被害者女性は声を上げずに一人で問題を抱えているのが現実です。

スポーツ界における女性の立場も非常に弱く、スポーツ協会などで女性のリーダー的存在が求めらていること、申立てられた不正や罪を受理して調査し、被害者の救済・回復の手続きを施す効果的な苦情対応のための独立メカニズムの設置の必要性を伊藤氏は訴えました。さらには、力関係で有利な立場の者によるパワーの乱用の禁止を法律で定めることも、今後の重要な課題の一つだと言います。来る6月に開催されるILO(国際労働機関)の会議では、セクシャル・ハラスメントに関する新しい条約の討議が予定されています。日本政府はこの条約を批准するのに反対態度を示していますが、この条約を批准することが強く望まれる、と伊藤氏からメッセージが発せられました。

 

 

【まとめ】

メダル獲得や記録更新など結果を常に求められるスポーツ界では、厳しい練習や減量、コーチの叱咤や体罰などはつきものでした。けれど、「練習」「トレーニング」という名の元で、人としての尊厳や権利が軽んじられる環境が許されてはなりません。学校であれ、トレーニング・キャンプであれ、どんな目的を達成するためであれ、虐待や暴力の罪は問われるべきであり、人間の理性に基づいてその一線が引ける社会こそが、私たちが目指すべき方向です。

セイ氏やマカー氏の話からも受け取れるように、勝利のために全てを犠牲にし、コーチに心身ともに支配される時代は終わりました。そして、#MeToo運動の中で次々と発覚するスキャンダルが示すように、性的虐待や暴力の加害者が罪を逃れる時代にも、終わりが告げられようとしています。弱い立場の子供や少女や女性が心身的な服従を強いられる構図を社会全体からなくすためには、大勢の人が立ち上がって声を上げ続ける必要があります。マカー氏らの30年来の闘いに実りがあったように、社会に変化をもたらすことは可能なのです。

【イベント動画】

イベントの詳細は、以下のリンクから動画でご覧になれます。

我謝京子氏によるオープニング:https://youtu.be/b6adSlay8r8

ジェニファー・セイ氏のパネル:https://youtu.be/EWWPXH-5V60

ナンシー・ホグスヘッド・マカー氏のパネル: https://youtu.be/o-yvON-Mj3I

伊藤和子氏のパネル:https://youtu.be/YCQ-WDTfAu8

 

【メディアによる記事】

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20190313/k10011846651000.html

 

【参考資料】

[1] https://courrier.jp/news/archives/112712/

[2]https://www.aclu.org/know-your-rights/title-ix-and-sexual-assault

[3] https://www.joc.or.jp/sp/olympism/quiz/about.html