【共同声明】「ユニクロと労働者の人権:中国における工場の労働環境についての追加調査」を発表しました。

 ヒューマンライツ・ナウ(HRN)、Students & Scholars Against Corporate Misbehaviour(SACOM)、及びLabour Action China(LAC)は、アジアにおける人権侵害を明らかにし、監視するための活動を続けており、特に中国におけるユニクロの委託先工場の労働環境に対して共同して調査を行ってきたが、このたび新たに本共同声明を発表しましたので、声明全文をご報告します。

 

ユニクロ共同声明 20160325[PDF]

 

共同声明:ユニクロと労働者の人権:中国における工場の労働環境についての追加調査

 

2016年3月25日

SACOM (Students & Scholars Against Corporate Misbehaviour)

ヒューマンライツ・ナウ(Human Rights Now)

LAC (Labour Action China)

 

ヒューマンライツ・ナウ(HRN)、Students & Scholars Against Corporate Misbehaviour(SACOM)、及びLabour Action China(LAC)は、アジアにおける人権侵害を明らかにし、監視するための活動を続けており、特に中国におけるユニクロの委託先工場の労働環境に対して共同して調査を行ってきたが、このたび新たに本共同声明を発表する。

 

背景

 

2015年1月、Students & Scholars Against Corporate Misbehaviour (SACOM)は、東京を拠点とする人権団体であるヒューマンライツ・ナウ(HRN)、香港を拠点として中国における労働者の権利の問題に取り組む労働者組織Labour Action China (LAC)と共同して、ユニクロの中国所在の2つのサプライヤー工場における労働環境の調査報告書(以下「第一調査報告書」)を発表した。[1]

この報告書及び同月に東京で開催された記者会見は、調査対象となった中国におけるユニクロのサプライヤー工場で確認された、様々な労働者の権利の侵害、及び厳しい労働環境の実態を明らかにした。

SACOMは更なる調査を実施し、2016年2月 「中国におけるユニクロサプライヤー工場に関する第二調査報告書」において追加調査の結果を発表した。[2]

HRNは、SACOMとは独立した立場において、2015年11月6日付で公開質問・要請書(以下「公開質問・要請書」)を公表し、ファストリテーリング社(以下「FR社」)に対してHRNが特に緊急性を要すると考えた問題に関して、FR社に回答を要請してきた。[3]

 

Pacific Textiles Holding Ltd(以下「Pacific工場」)の労働者は、有害化学物質と不十分なトレーニングによって潜在的な健康リスクに晒されている

 

2015年に発表した第一調査報告書、当局によって実施された産業排水検査の結果、及び追加調査において実施された労働者のインタビューの結果、Pacific工場の生産過程において有害な化学物質が使用されていることが明らかとなっている。

HRNは、公開質問・要請書において、FR社に対し、Pacific工場で使用されている化学薬品の名称を公開せよと求めたが、FR社は企業秘密を理由に開示を拒んでいる[4]
さらに、HRNが公開質問・要請書で要請したにも関わらず、F社は化学薬品の管理状況や取扱方法についての詳細について情報提供を行っていない。

この点、 FR社は、公開質問・要請書に対する2016年1月6日付の書面回答において、法令に従い中国当局に化学物質のリストを提出しており、また労働者に対しても工場における化学物質に関する情報を提供していると説明した。[5]

FR社は、「各生産棟において、化学物質に関する情報開示と注意喚起表があり、ライン内にどのような有害要素があり、どのような保護具の着用が必要か、等の情報が掲示されて」いるとしている。また、FR社は、Pacific工場の労働者に対して、「着任前に、各種有害要素及びその危険性、保護具の着用などの取り扱い時の注意事項に関して研修を」行っている旨説明している。[6]この他、FR社は、「トレーニング内容の見直し、並びに、いかに体系的に現場での意識向上と浸透を図るかが課題であることは工場とも既に協議しており、2016年2月末までに、工場のトレーニング内容の見直しおよび新規に導入するトレーニングシステムへの組み込みが完了する予定」だとしている。

しかしながら、労働者に情報を公開し保護策を講じているというFR社の主張は、 Pacific工場の労働者に対するSACOMのインタビュー結果に照らせば、裏付けを欠くと言わざるを得ない。

2015年7月にFR社が発表したCSRアクション[7]を受けて、2015年10月にSACOMが行ったPacific工場の労働者に対するインタビューの結果、未だに労働者は十分かつ適切な事前訓練を受けることなく有害物質に晒されていることが明らかになった。

労働者には、職場の安全や健康についての知識が欠けており、また高い生産目標を達成することが要求されているため、結果として労働者を保護する施策は不十分なものになっている。

一例を挙げると、2年間染色部署で働いている労働者は、SACOMのインタビューに際して、化学物質の健康への影響をはっきりと理解していないと述べた。労働者によれば、特定の工程において防護装備は提供されたものの、同じ工程を一日に何度も繰り返さなくてはならなかったため仕事をするのに不便だと感じ、結果として彼はそれをほとんど着用しなかったという。

裁縫・染色部署の労働者もまた、2015年10月に実施されたインタビューに際して、高温、換気不足そして不快感のためにほとんどマスクを着用していないと述べている。また、染色部署に所属する労働者は、仕事の後に痒く炎症を起こした肌になることや、勤務時間中の不快な悪臭の発生を報告している。これらの事例は、労働者には潜在的な労働災害への意識が欠如しているために正しく防護装備を使うことができず、結果的に労働者の健康が脅かされていることを示している。
このように、工場において使用されている化学物質がもたらす労働者の健康への潜在的悪影響をふまえ、HRN、SACOM、LACは、透明性と「知る権利」の確保の観点から、再びFR社に対して、どのような化学物質がサプライヤー工場で使用されており、どのように化学物質が管理されているかについて発表するよう要請する。

2016年1月6日付の書面回答でFR社は、「トレーニング内容の見直し、並びに、いかに体系的に現場での意識向上と浸透を図るかが課題であることは工場とも既に協議しており、2016年2月末までに、工場のトレーニング内容の見直しおよび新規に導入するトレーニングシステムへの組み込みが完了する予定」としている。[8]
この点で、HRN、SACOMおよびLACは、FR社に対し、労働者に対して使用されている化学物質、健康への影響を正確に通知すること、化学物質を使用する職場で労働する労働者には、包括的な就業前・就業中のトレーニングを提供することにより、関連する生産現場におけるすべての労働者の健康が適切に守られることを確実にするよう要請する。

 

時間外労働の改善に関する監査と進捗状況

HRNは公開質問・要請書において、時間外労働の慣行を改善するための情報の公開と施策の実施を求めてきたが、これに対しFR社は2016年1月6日付で、「増員、休日取得状況の管理強化、休憩時間の頻度の増加などの施策を実行することにより、2015年1月当初と比較して残業時間が削減できております」、また「3か月に1回を目安に監査又は現場訪問による実行状況の確認を継続してまいります」などと回答している。[9]
HRN、SACOM、およびLACは、FR社がサプライヤー工場において時間外労働の慣行を監視・改善するために努力していることを評価する。しかしながら、SACOMが2015年10月に実施したPacific工場とTomwell工場で勤務する40人の労働者に対するインタビューの結果[10]、工場労働者は各工場において一か月あたりそれぞれ約100時間と80時間の時間外労働を行っていると推計されている。[11]労働者が時間外労働に追いやられず十分な休息をとるようにするためには、より厳重な行動をとることが必要である。根本的な状況の改善のためには、基本給を増額することを通じて生活賃金を保障し、労働者が時間外労働で支払われる賃金に生活を依存させないことが重要である。

相当な生活賃金の保障

HRN及びSACOMはこれまで、 FR社に対し相当な生活賃金の保障を提供するよう要請してきた。ここでいう相当な生活賃金とは労働者が一般的な生活費を賄うために十分な賃金を意味する。FR社は、2016年1月6日付書面回答において、生活賃金という課題に対して、FLA(Fair Labor Association, 公正労働協会)などの枠組みの中で社内プロジェクト化しており、生活賃金の定義にあたり、より妥当な方法論・水準の精査を行っていると述べているが、十分かつ説得力のある回答とはいいがたい。
他のグローバル・ブランドが生活賃金の保障を明言し実行計画を策定・実施を開始しているにも関わらず、FR社はこの問題を避け続けているといえる。SACOMによる労働者に対するインタビューによれば、労働者が時間外に働く誘因の一つは、低い基本給のためであることが明らかにされている。工場における基本給があまりにも低いので、相当の収入を得るためには、労働者は時間外労働の支払いに頼らざるを得ないのである。相当な生活賃金の保証は労働者の基本的権利であり、我々は、FR社が、この問題に緊急に対応するために、包括的かつ満足のいく企業方針を採用することを強く要請する。

サプライヤーリストの公表

HRNは公開質問・要請書でFR社に対し、サプライヤーリストの公表を求めたのに対し、FR社は2016年1月6日付回答で、取引先情報は「ビジネス上の重要な機密情報に該当する」としてこれを断った。その代りに、FR社は自社のCSRレポートとウェブサイトにおいて生産活動に関する情報を適切に開示していると述べる。[12]しかしながら、これらの情報の開示は、生産ラインを通じて構築されるべき社会的責任を果たすためには不十分なものである。Hennes & Mauritz AB (H&M)とAdidas AG (Adidas)のような他のグローバルなブランドはサプライヤーリストを公開している。FR社はこのようなブランドと同様な市場展開をしているにもかかわらず、サプライ・チェーンに関する透明性を実現できていないことは遺憾である。

結論

HRN、SACOM、およびLACは、FR社が、労働者の健康や暮らしが直接に影響を与えることになる上記諸問題に対応することを再度求める。私たちはFR社の方針や行動を監視し続け、国連ビジネスと人権に関する指導原則に基づいた企業慣行を実現するために、建設的な調査結果や提案を引き続き提供する予定である。また、私たちは、FR社に対し、企業慣行の改善計画の発表とともに、そうした計画の実施過程を公にしていくことを要請する。

[1]http://hrn.or.jp/news/3030/

[2]http://sacom.hk/uniqlorevisit/

[3]http://hrn.or.jp/activity/5236/

[4]http://hrn.or.jp/wpHN/wp-content/uploads/2016/01/c07245791c2487a5b1395b953e9a25e4.pdf

[5]http://hrn.or.jp/wpHN/wp-content/uploads/2016/01/c07245791c2487a5b1395b953e9a25e4.pdf

[6]http://hrn.or.jp/wpHN/wp-content/uploads/2016/01/c07245791c2487a5b1395b953e9a25e4.pdf

[7]http://www.fastretailing.com/jp/csr/news/1507311700.html

[8]http://hrn.or.jp/wpHN/wp-content/uploads/2016/01/c07245791c2487a5b1395b953e9a25e4.pdf

[9]http://hrn.or.jp/wpHN/wp-content/uploads/2016/01/c07245791c2487a5b1395b953e9a25e4.pdf

[10] Tomwell 工場の裁断・裁縫部署からの20人の労働者と同様、Pacific工場の染色・品質管理・織物部署からの20人の労働者。

[11] Pacific工場の異なる部署の労働者は、1.5時間の昼食休憩を除くと1日10.5時間働いたと報告しており、また6日か7日働いた後に交代して1日の休日を取ったと述べている。したがって、毎月の時間外労働時間の合計は大体90から100時間と推定される。同様に、Tomwell工場の労働者も月曜日・水曜日・金曜日は時間外で2時間働き、火曜日・木曜日は時間外で3時間働き、土曜日に時間外で8時間働くと報告している。したがって、Tomwell工場での時間外労働は合計で約80時間になると考えられる。

[12]http://hrn.or.jp/wpHN/wp-content/uploads/2016/01/c07245791c2487a5b1395b953e9a25e4.pdf