【国際人権先例・CCPR】2004/No.1320 フィリピン

Pimentel et al.  v  The Philippines

通報日

見解採択日

文書発行日

通報番号

11/10/2004

19/03/07

03/04/07

No.1320/2004

 全文

http://www.unhchr.ch/tbs/doc.nsf/(Symbol)/2b64d3c0499e38fdc12572ce0049fb3b?Opendocument

手続上の論点 

国内的救済(OP 52(b)

実体上の論点

裁判の独立・公正(14条1項)、効果的救済 (2条3項(a))

通報者の主張

1972-86年のマルコス大統領治世下で、拷問、即決処刑、失踪などの人権侵害を受けた被害者及び家族ら9539人は、元大統領の亡命先であるハワイのアメリカ連邦地裁に賠償訴訟を起こした。連邦地裁は95年に賠償額や割り当てを決定し、この決定は96年上訴裁判所で確定している。通報者は3人(PimentelResusNarcisco)でいずれも、このマルコス資産裁判の原告である。

 97年、Narciscoは別の4人とフィリピン・マカティ市地方裁判所に、米国連邦地裁の決定が実行されないことについて不服を申し立てたが、裁判所は高額な訴訟費用を呈示して、申し立てを却下した。(支払い済みの一人あたり400ペソでなく、全体で4.72億ペソ)

 その後、再審申請も却下されたことから、99年、5人は賠償対象者の代表として最高裁に申し立てをした。しかし、本件通報の時点では、いまだ審議は開始していない。

 このように、米国連邦地裁の決定がフィリピンにおいて理不尽に遅延され、法外な訴訟費用の請求によって事実上権利を剥奪された。この訴訟遅延は裁判所によって引き起こされているのであるから、国内的救済手段が尽くされているかどうかは考慮の対象にならない。

 なお、後に最高裁は申請料を低額に決定したが、地裁による賠償命令は、執行されていない。

当事国の主張

 05年最高裁は申請料をPHP410と決定し、地裁にも審議再開を申し渡している。従って、通報者は国内的救済手段を尽くしてないので、本件は受理不可能。

委員会の見解

1) 許容性について

 アメリカ連邦地裁の決定がフィリピンの地方裁判所で執行されずにいた。しかし05年のフィリピン最高裁の決定の後、地裁で審議が再開されている。この点、賠償問題が民事事件であることに鑑みれば、国内的救済手段が尽くされているかどうかが問題にされないほど、手続きが理不尽に遅れているとはいえないので、受理は不可能である。

一方通報者らは、最高裁が訴訟費用を決定するまでの8年間に3回の申し立てを行った。この決定までにかかった時間が違法であるかについては、受理可能である。

2) 本案について

 141項が規定する「裁判における平等の権利」には、公正さが損なわれないように手続きが速やかに行われなくてはならない、ということが含意されている。よって本件では、141項及び23項に定める通報者の権利が侵害されたと認められる。