【イベント報告】2月5日AV出演強要問題を考えるシンポジウム

HRNは2月5日、AV出演強要問題を考えるシンポジウム「大阪『コスプレ』事案から考える立法への課題」を開催しました。

AV出演強要問題が社会問題として世間に認識されるようになり、今日では行政が問題の対応に乗り出すまでに至りました。一方で、2017年10月にはコスプレモデルと偽った勧誘によって女子高生たちをAVに出演された悪質業者に対して執行猶予つきの有罪判決が出されました。現状の法制度では、悪質業者に対して効果的な取り締まりができないことを知らせてしまう結果となってしまいました。

今回のイベントでは、ポルノ被害と性暴力を考える会(PAPS)の金尻カズナ氏、弁護士で消費者機構日本常任理事の中野和子氏、雪田樹里HRN理事、伊藤和子HRN事務局長がそれぞれの立場からAV出演強要問題をなくしていくための法制度について議論を行いました。

 

 

始めに雪田弁護士が、大阪で実際に起きた事例について説明しました。2017年5月29日、大阪府警はモデル募集サイトを運営していた人物Aを逮捕しました。モデル募集を見て応募してきた女性たちをAVに出演させていたということで職業安定法違反(有害業務の募集)での逮捕でした。その後、強要罪で再逮捕されました。AV出演の強要で強要罪が適応されたことが異例だったこともあり、報道されることとなりました。裁判では、起訴されていない事実を処罰することはできないとして、被害者の意に反して行われたわいせつな行為の撮影に対する精神的苦痛は量刑以上には重視されず、執行猶予つきの有罪判決が出されました。

これらを説明した上でこの事例から見える課題について雪田弁護士は、①裁判所は起訴されている犯罪を厳格に捉えて判断、②出演や性行為の強要ではなく、撮影後に同意であったと書面を書かされたことに対する強要になってしまった、③被害者の具体的な証言が不可欠とされる強制わいせつ罪や準強制性交等罪での起訴が難しいなど課題があると話しました。雪田弁護士は、これらの課題を解決するためには「AV出演強要の被害実態に見合った法規制を作っていかなければいけない」と語りました。

 

 

金尻氏からは、大阪府警に逮捕されたAの巧妙で悪質な手口が報告されました。撮影を嫌がると、事前に行った美容院代を請求したり、複数回撮影した後にお金を支払う形を取り、途中で止めるとお金は支払わないなどの手口で被害者たちが断りにくい状況を作り上げていたことなどが報告されました。金尻氏は「この事件の被害者は200人とされるが、事件化できたのは3件のみ」と言い、親に相談できず弁護士を立てられかったり、弁護士費用を用意できないなど被害者が泣き寝入りするケースが多いと悔しそうに語りました。また「見た目上は変化が起きているように見えるかもしれないが、相談支援の現場では、困っている被害者がいます」と立法化の必要性を訴えました。

 

 

中野氏は消費者団体から見ると、AV出演強要で交わされる契約書は、①記載内容が不明確で事務所側に有利な内容、②個別の主演契約書が締結されていない、③AV等の定義がなく、プライバシーの侵害、性的自由の侵害にあたる行為が損害賠償を理由に強要されているという点に問題があると説明しました。その上で、どのような契約書にすれば、出演者の自己決定権が尊重されるものになるのか提案しました。また中野氏は、「消費者被害問題でも同じであるが、断れないということが一番の問題だと考えている。嫌だからという自分の意思だけで断ることは法的に認められていることを一般的に広めていく必要を感じている」と語り、消費者団体としてできることは全てやっていくと強い決意を示しました。

 

 

 

伊藤事務局長は、「2017年に刑法の性犯罪規定が改正されたが、それでも乗り越えられない壁がある」と話しました。強制性交等罪には暴行・脅迫、準強制性交等罪には抗拒不能という要件が必要とされ、AV出演強要被害では処罰できないという状況があります。これらの要件を変えていくためのロビー活動をしつつ、AV出演強要の被害実態に則した法規定が必要だとして現在、法律の検討をしていることを明かしました。

4人の報告の後には、後藤弘子HRN理事がコーディネーターを務め、法規制をしていくための具体的な議論が行われました。

未だ根深く深刻な問題を抱えているAV出演強要問題。

ヒューマンライツ・ナウはこれからも、ひとりでも多くの方々の力になるために、活動していきます。