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国・地域から : 日本

【報告書】2011年11月 福島・郡山調査報告書

福島第一原子力発電所事故後、大量の放射性物質が周辺地域を汚染し、人々、特に感受性の強い子ども等の健康に生きる権利が深刻な危機にさらされています。
特定非営利活動法人ヒューマンライツ・ナウ(以下HRN)は2011年11月26日、27日に、福島県の県庁所在地であり深刻な汚染が報告されている福島市、福島県の人口密集地で経済の中心地である郡山市に調査団を派遣し、現地を調査するとともに、原発周辺住民の訴えなどを事情聴取しました。
その報告書をこのたび公表いたしました。一人でも多くの方に、福島に暮らす住民の実情と声を知っていただきたいと思います。
また、HRNは調査を踏まえて、人々の健康を守るために、政府、県、市の速やかな対応を求めています。
報告書全文と添付資料は以下をご覧ください。
 

福島調査報告書 確定版.pdf
添付資料1 セシウム汚染に関する地図.pdf
添付資料2 渡利地区測定結果.pdf
添付資料3 渡利地区測定結果地図.pdf
添付資料4 福島県健康調査票.pdf
添付資料5 福島県に対する質問と回答.pdf  

添付資料6 「郡山市安全・安心アクションIN郡山」からの要請書.pdf 

添付資料7 栄養教職員アンケート.pdf
 
 
報告書の概要
 

1   福島第一原子力発電所事故後、大量の放射性物質が周辺地域を汚染し、人々、特に感受性の強い子ども等の健康に生きる権利が深刻な危機にさらされています。

特定非営利活動法人ヒューマンライツ・ナウ(以下HRN)は20111126日、27日に、福島県を代表する都市である福島市、郡山市に調査団を派遣し、現地を調査するとともに、原発周辺住民の訴えなどを事情聴取し、報告書を公表しました。

2   今回の調査の結果、私たちは、以下のことを確認しました。

1 ) 高い放射線量

福島市、郡山市には、本調査時点で事故発生後1年間の積算線量が20ミリシーベルトを超えるおそれがあると判断された地域はなく、避難指示がなされていないが、住民は、放射線量が高いと訴え、不安を募らせている。行政がきめ細かい測定を実施しないため、市民が自ら放射線量を測定しているが、公式的なデータと比較しても放射線量が高く、なかには年間に直せば20ミリシーベルトを超える数値となる深刻な空間放射線量となっている測定結果も報告された。例えば、渡利地区の住民測定では、毎時5マイクロシーベルトから10マイクロシーベルトという地域がみられ、御山地区・中川原には、最も高くて、毎時80マイクロシーベルト、毎時18あるいは20マイクロシーベルトという場所が点在するという。蓬莱町でも、毎時6、7マイクロシーベルト程度ある、と住民は述べた。行政はそうした訴えを聞いても、測定しなおしてくれないという訴えも多かった。

2)  除染

こうした放射性物質の汚染を除去するために、除染が大きな課題とされている。しかし、国は、年間積算線量が20ミリシーベルトを下回ると判断された地域では、国が実施主体となって責任をもった取り組みをせず、除染は自治体、そして住民に丸投げされている。福島では、掛け声とは裏腹に、行政による除染はほとんど実施されていない。住民たちは自ら除染を始めたが、計画性もなく、専門家も関与しない除染には有効性がなく、しばらくすると再び線量が元に戻ってしまったという。

他方、郡山市では、町内会単位で50万円の補助金を交付して、町内会に除染を奨励している。本来の町内会活動は、住民の自主性に委ねられるであるのに、一部の町内会では、地域の除染活動への参加を半ば強制し、多くの場合女性たちが、意思に反して危険な除染活動に参加させられている。なかには、妊娠・出産を控えている者もいるという。除染残土・汚泥の仮置き場は、非表示、非公開とされ、子どもが遊ぶ公園などに掘って埋められるなどしており、子どもたちが危険と隣り合わせでの生活を余儀なくされているという。

3)  健康影響

福島市、郡山市では、放射線量が最も高い原発事故直後、水が出ず、子ども連れで外に並んで水を長時間待ったり、買い出し等に出た住民も多かった。23時間外にずっと出ていた者も多く、雨に打たれた住民もいる。汚染された水を知らずに飲んだ住民も多かった。そして、こうした長時間に及ぶ高濃度放射線への曝露の後に、健康状態の悪化が起きたと訴えている。

にも関わらず、内部被ばくに関する十分な検査体制が確立されておらず、健康診断が無料で実施されているわけでもない。福島市、郡山市の住民には、公的な内部被ばく検査、尿検査、血液検査、甲状腺の検査が実施されていない。福島県は20115月、放射線の影響に関して、「県民健康管理調査」を実施することとし、福島県立医科大学に業務を委託した。この調査では、問診票による基本調査のほか、健康診断、質問紙調査及び 18 歳以下に対する甲状腺検査を行い、その結果をデータベース化して長期的に管理するとされる。しかし、実際、福島市、郡山市の住民には、福島県立医科大学から全住民を対象とする調査票が送られてきたにすぎない。

4) 食の安全

このように深刻な不安を抱え、それでも避難指示がなされていないことから、住民等は、「せめて内部被ばくをしないように」「食の安全を確保したい」と考えている。しかし、食の安全は極めて深刻な事態にある。

HRNは、食品の検査体制の正確な実態を確認するため、福島県に問い合わせを行い、回答を得たが、回答内容は「食の安全」をめぐる状況が極めて深刻であることを示している。

回答によれば、例えば米については、当時緊急検査の対象になった福島市(旧小国村、大波地区)については、「地区内の稲作農家の全袋を検査対象として、1袋(30キログラム)から1検体を採取して検査」するとし、特定避難勧奨地点が点在する地域等(321旧市町村)については、「1戸1検体を原則」とするが、それ以外に地域については、明確なルールもないようである。野菜については、指定された畑に職員が出向いて600グラム~1キログラムをサンプリングして測定するが、そのサンプルの選定に明確な基準はない。魚については、週に1回、100検体前後を検査するということであるが、川魚については、基本的に1河川につき月1回で採取し、大きい川は随時対応するとのことである。このような極めて荒いサンプル検査は、全体の安全性を保障するものとは到底いえない。こうした検査体制は、消費者だけでなく、生産者そのものを苦しめている。

こうした状況にも関わらず、福島市、郡山市で、子どもたちの口に強制的に入る給食には、「地産地消」が謳われ、米・牛乳その他の食材について、福島県産の食材が導入されている。給食に懸念を持つ家庭の子どもについては、米と牛乳について家から持参させることを許している学校もあるが、保護者のほうから申し出ない限りそのような選択肢が示されない学校も少なくない。また、選択肢が認められたとしても、自宅から持参をする子どもは少数派であり、孤立したくないなどの考えから、自宅からの持参に踏み切れないという声も少なからず聞かれた。また、親の選択によるこうした措置は、すべての子どもへの健康に配慮した措置とはいえない。子どもたちの給食の安全を確保するためには、福島市、郡山市、そして県内の年間推計外部放射線量(自然放射線を除く)が1ミリシーベルトを超える地域のすべての小中学校に、学校単位で放射線測定器を設置して、全品検査をすることが必要であるが、そのような措置には遠く及んでいない。

5)  安全キャンペーンの浸透と孤立化する住民

  福島県では、原発周辺住民に対する放射線被ばくの実情が安全であり心配はいらないとするメッセージを県民に積極的に提供する啓発活動が行われてきた。住民たちは、疑問を持っても安全だと言われ続け、自分の懸念を否定され続けるため、諦めと疲労、絶望感を募らせていた。そして、安全性に懸念を抱いても、声を大にして発言することができず、声を挙げることを通じて周囲と軋轢が生まれて、孤立を深めていた。

こうした状況は子どもたちを取り巻く状況をも深刻にしている。福島市、郡山市では、屋外活動、外での体育や部活動が公然と実施されている。いずれも子どもと親の選択に委ねられているが、現在の校内での多数派は「外で遊ぶ、部活をする、給食を食べる」という子どもであり、それと異なる行動を選ぶ子どもは孤立しかねない。親が懸念をしている場合でも、子どもたちの要望で、外遊びや部活を容認せざるを得ない状況になっている。

6) 避難

放射線の健康影響を懸念する住民の中には、危険だと感じつつも避難することができないでいる住民も多い。避難指定をされた地域と異なり、自主避難に対する支援、居住、金銭的補償等は十分ではない。また、適切な受け入れ先を探すことは人脈やインターネットのスキル等がなければ容易ではない。妊婦や新生児の母親など、高い放射線量のもとで居住を続けながら、危険性の告知もされず、避難先にもつながれていない母子も少なくない。避難しないという決断を強化しているのは、福島県における「安全キャンペーン」である。「大丈夫」「安全」という情報やメッセージが流される中、住民は、避難というハードルを乗り越えることが困難になっている。

まとめ

こうした福島県の福島市、郡山市の実情は、健康に対する権利の保障とはほど遠い。避難に対する支援もなく、国として責任をもった除染も実施されず、既に大量の被ばくを受けている人々、特に子ども達が、自分たちの放射線影響に関する身体の健康診断も受けられず、安全性のモニタリングが極めて不十分な食品が安全なものとして流通し続け、飲食に供されている状況は深刻である。住民は、自分や家族の身体がどれだけ汚染されているのか、毎日食べている食糧がどれだけ汚染されているかを知る権利を保障されていない。個人の最も大切な権利である身体に対する権利が保障されていないのである。

勧告  HRNは、こうした深刻な事態に対し、国、福島県および福島・郡山市の一刻も早い対応を求めて、

以下の措置を取るよう勧告しています。

【国に対して】

1  住民の要望を踏まえて、公正で精度の高い放射線量の測定を網羅的に実施すること。その場合、放射線量の高い場所を基準として測定を行うこと。

2        1の測定に基づいて、避難地域の再検討を行うこと。

3        1年間の推計外部被ばく量が1ミリシーベルトを超える(自然放射線を除く)地域を含む自治体において、なかでも原子力損害賠償紛争審査会において「自主的避難等対象区域」と指定された地域を最優先に、

(1)   半年以内に、全住民に対し、内部被ばく検査、甲状腺検査を無料で実施すること。国の財政支出により、必要なホールボディカウンター等の医療機器を購入・配置すること。

(2)   放射線被ばくによる疾病の発生を防止するために、住民が定期的で精密な健康診断を無料で受けられるようにして、被ばくに起因する疾病が発生しないようモニタリングする体制を整備すること。また、放射線被ばくとの関連が疑われる疾患すべてに関する医療費を無料とする立法措置をとること。

(3)   国の財政支出により、全ての小中学校の給食センター、給食調理室において全品検査が行えるよう、食品放射線測定器を購入・配置し、給食の安全性を確保すること。

(4)   国の財政支出により、最新の食品放射線測定装置を購入・配置して、全食材に対する全品検査を実施する体制をすみやかに講ずること。

(5)   「除染特別地域」以外でも、国が除染実施主体となり、効果的な除染を実施すること。

(6)   住民の避難の権利を認め、避難した住民に対し、原子力損害賠償紛争審査会の賠償とは別に、住宅の提供および避難に要する費用の実額を補償し、避難を支援すること。

(7)   住民の避難を支援するために、災害救助法の弾力的運用に基づき、全国でいわゆる「自主避難者」を受け入れる自治体に関する情報を住民にきめ細かく提供する行政サービスを展開すること

(8)   住民・特に18歳未満の子どもに対し、夏季等の長期休暇を利用しての一時避難・保養に関する制度を国の財政援助で確立し、一時的避難の支援を行うこと。

【福島県に対して】

1 「県民健康管理調査」について

(1) 「県民健康管理調査」検討委員会は、低線量被ばくの危険性について知見と経験を有し、健康リスクを重視する立場に立つ専門家を中心に構成に変更すること。

(2)  調査結果を透明に情報開示し、リスクを十分に説明して、住民の信頼を回復するよう努めること。

情報提供・放射線防護教育について

    住民への低線量被ばくに関する情報提供のあり方を、低線量被ばくの危険性について知見と経験を有し、健康リスクを重視する立場に立つ専門家を招聘して、再検討すること。

他都道府県での受け入れについて

各都道府県に対する民間賃貸住宅の借上げ制度についての新規受入れ打ち切り要請を公的に撤回し、今後このような要請は行わないこと。

【福島市、郡山市に対して】

住民を意に反して、危険を伴う除染活動に駆り立てないようにすること。

仮置き場の設置は、住民参加により、公開・透明な形で決定し、仮置き場には明確な表示をして立ち入りを禁止すること。

給食の食材の産地をすべて生徒・保護者に公表すること。給食の安全性を確保するための父母との意見交換会を定期的に実施すること。

保育園広域入所等も含め、自主的な避難者が一時避難先で不自由なく生活できるよう適切な措置を取ること。

 

 

 


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