【賛同】インド人権NGOに対するハラスメントに反対する緊急声明文に署名しました。

国連「健康の権利」特別報告者として福島の被災者の人権状況について報告書をまとめたアナンド・グローバー氏が理事を務める人権NGO「ロイヤーズ・コレクティブ」が、インド内務省によって外国資金受け取り資格を180日間停止させられました。これによってロイヤーズ・コレクティブの活動に支障がでています。

これは、インドの現政権に批判的な団体に対する政府のハラスメントであり、インドの人権擁護・民主主義における脅威としてとして市民社会に受け止められています。

この事態をうけ、世界のNGOが資格停止措置の撤回を求め、インドのモディ首相にレターを送付するキャンペーンを行い、ヒューマンライツ・ナウも団体として署名しました。

以下、レターの和訳を全文ご報告いたします。

日本語訳: 20160711 モディ・インド首相に対する緊急声明文 【PDF】

英語原文: Lawyers Collective International Solidarity Campaign 【PDF】

 

 

2016年6月26日

 

ロイヤーズ・コレクティブ国際連帯キャンペーン

ナレンドラ・ダモダルダス・モディ・インド首相に対する緊急声明文

 

私たち署名者一同は、人権擁護に関心を持つ国際社会の一員として、また、インドに友好的な国々の市民社会・学界の代表として、ロイヤーズ・コレクティブ(インド)に対する支持を表明するためにこの声明文を送付します。

 

ご存知の通り、インド内務省は2016年6月1日、ロイヤーズ・コレクティブの外国資金受け取り資格を180日間停止しました。その理由として、ロイヤーズ・コレクティブが、外国寄付規制法のいくつかの規定に違反したことが挙げられています。現在、ロイヤーズ・コレクティブの資格が永久に抹消される可能性も取り沙汰されています。

 

資格停止命令とそれに対するロイヤーズ・コレクティブの対応は、インドメディアによって大きく扱われてきました。(これらの報道については、以下のリンクを参考:

http://www.lawyerscollective.org/wp-content/uploads/2016/06/LC-Response-to-FCRAsuspension-02-06-2016.pdf

 

ロイヤーズ・コレクティブの資格停止問題は、国際社会によって危機感を持って受け止められており、国際社会及び海外在住インド人社会におけるインドの人権状況に対する評価を損ねる可能性があります。ロイヤーズ・コレクティブの創設理事であるインディラ・ジャイシン氏とアナンド・グローバー氏は、傑出した公益の経歴を持ち、弁護士・人権活動家として高度の清廉さを兼ね備えています。ジャイシン氏は、DV、女性の所有権、職場におけるセクシャルハラスメントなど、性差別に関する法整備に前例のない貢献をしてきたほか、国連女性差別撤廃委員会の委員も務めています。グローバー氏は、国連人権理事会の委員に任命され、2008年から2014年まで「健康の権利」に関する国連特別報告者のポストを務めました。また、彼は、インドにおけるHIV陽性者・LGBTの権利の擁護の第一人者として活躍し、全ての人々の保健医療へのアクセスを促進するために昼夜を問わず活動してきました。両者の活動は、国際的にも正当に評価されています。

 

以上の見解から、私たちは、モディ首相に、資格停止命令が即時に撤回されるよう個人的に働きかけることを要請します。特に、下記の点について十分に配慮することを要請します:

・インド内務省は、ジャイシン氏とグローバー氏の名誉を毀損する明確な意図を持って、法の適正な手続きなしに、資格停止の最初の通告及びその後の停止命令をメディアにリークしたこと。

・インド内務省の措置のタイミングは、法の支配に依らず、脅迫及び抑圧の意図があること:

  • 2015年11月22日の最初の通告は、グローバー氏が、モディ首相の所属政党の党首で殺人容疑にかけられているアミット・シャー氏の釈放について裁判所で異議申し立てを行った日と同じ日に出された。
  • 2016年5月30日の資格停止命令は、裁判所がシャー氏釈放に関する仲裁を拒否する決定を出したことについて、ジャイシン氏が異議申し立てを行うことを表明した翌日に、メディアにリークされた。

・ロイヤーズ・コレクティブは、インド内務省の主張に対して反論するだけでなく、透明性及び説明責任の観点から、内務省の外国資金不正利用に関する一つ一つの申し立てについて、具体的かつ詳細な回答を繰り返し行ってきた。しかし、内務省は、ロイヤーズ・コレクティブが送付した公式の回答を無視し、報復の意図を示してきたこと。

 

「平和的集会及び結社の自由」に関する国連特別報告者のマイナ・キアイ氏は2016年4月、外国資金へアクセスする権利は、結社の自由の不可欠な要素であるとして、外国寄付規制法が国際法の原則及び基準と一致しないと述べました。アムネスティ・インターナショナル・インドは、ロイヤーズ・コレクティブの活動を支持しながら、「有名な人権団体であるロイヤーズ・コレクティブに課された資金規制は、憲法で保障されている表現及び結社の自由を侵害している」と表明しました。

 

現政権が反対派を抑圧し、ロイヤーズ・コレクティブのような正当かつ合法な手段を使ってインドの疎外されたコミュニティのために社会正義を確保し、政府の説明責任を求める団体を黙らせるための政治的道具として外国寄付規制法を利用していると私たちが考えるのはこうした背景からです。私たちの主張は、「政府が報復していることは疑いの余地もない。ロイヤーズ・コレクティブが狙われたのは、理事たちが事件の処理において政府に楯突いたからである。外国寄付規制法の資格停止命令は、明らかに反対の声を抑えるための口実である」というアムネスティー・インターナショナル・インドの報告にも裏付けられています。

 

キアイ氏、並びに、「人権擁護者の状況」に関する国連特別報告者であるミシェル・フォルスト氏及び「表現の自由」に関する国連特別報告者であるデビッド・ケイ氏は2016年6月16日、インド政府に対し、外国寄付規制法を撤廃するよう要請しました。3名の特別報告者は共同声明の中で、「私たちは、政府に説明責任を履行させ、インドの民主主義を支える重要な役割を果たしている人権活動家及び市民社会が安全に活動できる環境を保障するよう当局に求める」と表明しました。

 

私たちには、インド政府が、インド及びその人々のために多大な貢献をしてきたロイヤーズ・コレクティブを評価するよりも、むしろ、彼らの活動を妨害しているように見えます。その結果、司法へのアクセスを最も必要としている人々が疎外される事態を招いているのです。

 

以上のことから、私たちは、資格停止命令の即時撤回、そして、インド憲法に掲げられた権利及び義務に基づいて、ロイヤーズ・コレクティブが社会で最も脆弱で疎外された人々の権利を擁護する活動を続けられる自由及び空間を保障するよう要求します。

 

さらなる情報が必要な場合は、ご連絡下さい。

 

首相の迅速な回答を求めます。

 

 

署名者:

 

 

以上