【声明】スリランカ:最高裁長官に対する弾劾罷免に抗議し、司法の独立の侵害と大統領への権限 一極集中に深刻な憂慮を表明する。

スリランカ:最高裁長官に対する弾劾罷免に抗議し、司法の独立の侵害と大統領への権限
一極集中に深刻な憂慮を表明する。

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2013年1月12日、スリランカの最高裁長官が議会により弾劾罷免された。東京を本拠とする国際人権NGOヒューマンライツ・ナウは、この弾劾罷免に抗議するとともに、スリランカにおける司法の独立の侵害と、大統領への権限一極集中に深刻な憂慮を表明する。

スリランカの最高裁長官シラニ・バンダラナヤケ(Shirani Bandaranayake )氏の罷免の動きは、2012年11月1日、ラジャパクサ大統領が、同氏の不正行為を理由として議会に対し罷免を申請したことから始まった。

スリランカ憲法上、大統領は現職の最高裁長官を更迭できず、議会による弾劾のみが認められている。しかし、ラジャパクサ大統領の与党(United People’s Freedom Alliance Freedom Party (UPFA))は225議席の議会の過半数を占めており、罷免は容易であった。

しかも、最高裁長官罷免の調査を行う議会の秘密委員会は、ラジャパクサ大統領の実兄であるチャマル・ラジャパクサ氏が責任者を務めている。

2012年11月8日、同委員会は、最高裁長官に対する5件の訴追のうち3件についてこれを有罪とした。

この過程において、最高裁長官に対する公正かつ公開の聴聞手続は行われず、公正な裁判を受ける権利は保障されていない。国連の司法と弁護士の独立に関する特別報告者Gabriela Knaul氏は、12月31日付の声明で、「最高裁長官罷免の手続は極めて政治的に行われ、手続には透明性、手続上の明確性が欠けており、デュープロセスと公正な裁判を受ける権利が保障されていない」と強い懸念を表明した。(1*)

同様の懸念は、スリランカ国内外の市民社会からも強く示されている。国際法曹協会(IBA) の人権委員会の代表Baroness Helena Kennedy は、ラジャパクサ大統領に対し、民主主義社会において司法の独立は不可欠だと強調した。(2*) 国際法律家委員会(ICJ)は、スリランカ政府に対し、弾劾手続においては国際スタンダードに基づきデュープロセスを尊重するよう求めた。(3*)

国内では、人権団体の呼びかけにより、2013年1月10日に、首都で最高裁長官弾劾罷免に反対するデモ行進が行われた。

ところが、こうした国際社会と国内からの批判に何ら耳を傾けることなく、議会は最高裁長官の弾劾罷免を強行した。

2012年7月以降、スリランカでは司法関係者と弁護士に対する脅迫と攻撃が深刻となっており、今回の事態はその延長戦上で発生した最も象徴的な司法の独立への蹂躙である。

長きにわたる内戦が終結した後、スリランカにおける大統領への権限集中はさらに進んでいる。

公正な手続を経ない最高裁長官罷免が容認され、司法関係者・弁護士に対する攻撃・抑圧が繰り返されれば、スリランカにおける司法の独立と三権分立の存立を脅かし、権力の独裁が進行するであろう。

ヒューマンライツ・ナウはこうした事態に深く憂慮を表明する。

スリランカ政府当局に対し、最高裁長官の罷免を即座に撤回を求めるとともに、司法と弁護士がいかなる脅迫、介入を受けることなく活動できるよう保障するよう、要請するものである。

                             

  以 上